レコード大学ロンドン校、入学初日の話。

そう、彼の名はパーシー。
私がもし「レコード大学ロンドン校」に通っていたなら、間違いなく彼は教授だったと思う。
学位はもらえないけれど、代わりに一生もののレコード愛を授けてくれる。そんな人だった。

当時、私は19歳。
右も左もわからない、いや、正確に言うと右も左もどっちにレコード屋があるかもわからない少年だった。
唯一わかっていたのは、“とにかくレコードが欲しい”ということだけ。

見知らぬ街ロンドン。
地下鉄の構内には湿気と金属のにおい、地上に出ればカフェのコーヒーと雨の匂い。
そんな中、カムデンのマーケットを歩いていると、
ひとりの黒人の男が小さな折りたたみテーブルの上に、ぎっしりとレコードを並べていた。

「Yo, brother! ちょっと聴いてみな!」
彼が差し出したのは、ラジカセ型のポータブル・ターンテーブル。
今で言うところの“移動式試聴ステーション”だ。

針を落とすと、スピーカーから漂うスモーキーなジャズヴォーカル。
聴いたこともない声、知らないグルーヴ、でも一瞬で心を掴まれた。
彼の名はパーシー。そして、その声の主はCarmen Lundy。

「これ、買う。」
気づいたら、そう言っていた。

パーシーは少し笑って、
「いい耳してるじゃないか。ちょうどロンドンにライブで来るぜ。聴きに行きな。」
と言った。

その時の彼の笑顔と、雨に濡れたジャズカフェの看板、
そして手にした“初めてのロンドンの一枚”——Carmen Lundy『Good Morning Kiss』

実際のレコードは👇
CARMEN LUNDY / TIME IS LOVE

レコードは、ただの音の円盤じゃない。
その一枚が、街の空気や人の声、そして自分の人生を記録してくれる。

この一枚から、僕の“ロンドン留学”——いや、“レコード留学”が始まった。
そこから30年、旅はまだ続いている。

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