JOE DAVIS…じゃないか!
とは言いつつ、こちらはほとんど情報がない。
アジア人ひとり、フロアの片隅でポツネンと立ち尽くす。
「へーい、カミーヤ(カミヤって発音できないけど)。おまえさん、レコード探してるのかい?」
「そ、そうだよ…」
心臓がバクバクして声が震える。
「俺はブルーブラジルってコンピ作ってるんだ。今度GILLESとまた新しいコンピも作るんだぜ。興味あるかい?」
「も、もちろん!!」
なんて言いながら、頭の中では「ちょ、ちょっと待て、まだ家も決まってないし、さっき会ったばかりだし…」
それに、ブラジルのオリジナル盤っていくらするんだろう? どこに住んでるんだろう?
頭の中は質問でいっぱいだ。
「ブラジルの音楽、好きなんだね」
「おお! それなら今度うちに来いよ。レコード売ってあげる」
「まじですか!? い、行きます!!」
「いや、ちょ、いきなり過ぎないですか?」
心の中ではそう叫んでいたけど、口には出せない。
でも、なんだかワクワクが止まらない。
そして、紙に住所と電話番号を書いてもらい、最寄り駅を教えてもらった。
「ほ…ほんとに行っていいんや…」
「まじですか?」
思わず、沖野さんに確認する。
「なんか家においでって言ってくれてるんですけど、行っていいんですかね?」
「えっ、ほんま?ほんならええんちゃう?」
沖野さん、めちゃライト。笑
こうして、ロンドンでの初レコードツアー(?)が決まった。
この時の沖野さんとの出会いが、その後ずっと続く付き合いになり、今も僕にとってレコードの恩人のひとりになっているなんて、当時の自分は思いもしなかった。